一炊の夢
中国、蜀の国の盧生という青年が、人生に迷いを感じ、
楚の国羊飛山に住む賢者に人生とは何か、
問うてみようと旅に出ます。途中、邯鄲の里へ着き、一見の宿屋に泊まります。 その宿の女主人は、かつて仙人の法を使う人を泊めたときに そのお礼にと不思議な枕をもらいました。 その枕を使って寝ると、夢によって悟りを開くというのです。 女主人は盧生の素性や旅の目的などを聞くと、 食事の用意が出来る間、しばしその枕を試してみるように勧めます。そこで盧生も、その枕を借りて一眠りすることにします。
うとうとすると起こす人がいます。楚の国の帝が位を盧生に譲るという勅使です。 盧生は勅使に促されて、天にも昇る心地で輿に乗って宮殿に赴き、 王位につきます。
それから50年酒宴は続き、 盧生も歓喜の舞をまい、 栄華を極めた毎日を送ります。
と、その時、
宿の女主人が粟の飯が炊けたと起こしに来ます。 目を覚ました盧生は、全ては夢であったのかと、 しばらくは呆然としますが、人生何事も一炊の夢と悟り、 不思議な枕に感謝しながら、自分の故郷である蜀の国へと帰っていくのでした。